現代美術二等兵のふたり。左がふじわら、右が籠谷 現代美術二等兵。この妙な名前のアーティスト・ユニットが作り出す作品は、名前以上に変てこなものばかりだ。例えば、天使の背中の羽がむしられて手羽先になった『手羽先天使』、厳しい修行に嫌気が差してパンチパーマの不良少年化した『ぐれダルマ』、頭が天井にぶつかるため普段以上に首を曲げているミロのヴィーナスのつぶやき『狭い…』等々。世間では愚にもつかない駄洒落を「おやじギャグ」と呼んで小馬鹿にしているが、彼らは自分たちの作品を堂々と「駄美術」と称している。高尚なアートに対抗して(?)腰砕け必至の駄美術ワールドを極めつつある彼らに迫ってみよう。
『駄美術ギャラリー』
2007年11月29日発売
マガジンハウス 1260円(税込)
現代美術二等兵のメンバーは、籠谷シェーンとふじわらかつひとの二人である(1998年までは浜田リュウジも在籍していた)。同じ美術大学に入学し意気投合した彼らは、周囲からセットで見られるほどいつも一緒に行動していたそうだ。大学では共に彫刻を学んでいたが、最初のうちはいわゆる美術的な作品を作っていたという。高校までの美術教育と受験勉強で、頭の中が凝り固まっていたのかもしれない。それを担当の教授陣にこっぴどく批判され、作っては否定される経験を重ねながら徐々に自由な創作へと傾いていった。結局在学中は画廊での発表は行わず、就職決定後に学内ギャラリーで展覧会を行った程度。しかし、卒業後にふじわらが放った一言「貸し画廊ならお金を払えば自由に発表ができて、アーティストを名乗れるらしい。割り勘にすればお金もあんまりかからないぞ」をきっかけに、1992年に初個展を開催。当初は名前もなかったが、3度目の個展『現代美術二等兵』(1994年)を機に現在の名称に落ち着いたのである。
彼らの制作には独自のルールがある。ユニットだが共同制作は行わず、それぞれが作った作品を持ち寄るソロ二人組形式なこと。表現ジャンルは彫刻、絵画、写真など何でもありなこと。とにかく「楽しい」「面白い」が最優先されること。「どうしようもなさを楽しむっていうか、こんなアホなものは世の中に二つとないと思うとワクワクしてくる」。籠谷のこの言葉に彼らのスタンスが集約されていると言えよう。
現在、籠谷は大手印刷会社のデザイナー、ふじわらは玩具の企画・制作・デザインを生業としている。アーティスト活動は余技とも言えるのだが、それゆえ程よく力の抜けた作風が維持されているのかもしれない。分別をわきまえた大人による真剣なお遊び。それが現代美術二等兵の魅力ではなかろうか。昨年11月には初の作品集が発売され、徐々にその名がメジャーになりつつある。また、「今後はプロダクト的な作品もやってみたい」(籠谷)と、新展開をにおわせる発言も。今年夏には地元大阪で大規模な個展が行われることも決定した。彼らの大ブレイクはもはやカウントダウン状態である。
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『ぐれダルマ』
『手羽先天使』
『抱っこしてちょ』
『狭い・・・・』
『ジャミロなくわい』
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2008年4月1日
(美術ライター 小吹隆文) |
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ともに大阪府出身の、籠谷シェーン、ふじわらかつひとによるアーティスト・ユニット。
1992年の『大蔵SHOW展』(立体ギャラリー射
手座、京都)で活動を開始。以後、京阪神と東京で個展、グループ展多数。2004年、『GEISAI♯6』で審査員特別賞(Fantastic
Plastic Machine 田中知之賞)及びスカウト審査員賞(ROCKET賞)を受賞。2007年、初の作品集『駄美術ギャラリー』を出版した。
現代美術二等兵のホームページ
http://homepage3.nifty.com/2touhey/index.html |
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2008年8月下旬〜9月上旬、大阪・梅田のHEP HALLで個展。
2008年11月、京都のヴォイス・ギャラリーpfs/wで新作個展。
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筆者プロフィール
小吹隆文
情報誌編集者を経て、2005年よりフリーの美術ライターになる。
主な執筆先は、京都新聞、美術手帖、ぴあ関西版、エルマガジン、artscape(ウェブ)など。
個人サイト「勝手にRECOMMEND」
URL http://www.recommend.ecnet.jp/
ブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」
URL http://www.keyis.jp/ |