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#2「大阪とバイオの深いつながり〜森下竜一さんに聞く Vol.2」
#1「大阪とバイオの深いつながり〜森下竜一さんに聞く Vol.1」
 
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大阪とバイオの深いつながり〜森下竜一さんに聞く Vol.2

 前回、大阪とバイオの歴史的なつながり、そしてバイオベンチャーなどの新しい動向についてお伝えした。ある意味で普遍的な技術であるバイオは、特定の地域だけのものではない。だからこそ高い価値を持つ。しかし、それぞれの地域にはそれぞれの基盤があり、それに根ざす特徴というものがやはりある。バイオを取り巻く環境という点から見たとき、大阪のバイオの強みとは何だろうか。それは、大阪というまちにどんな将来をもたらす可能性があるのか。一方、課題としてはどんな問題があるのか。第2 回目をお届けする。

大阪のバイオの課題と展望

 大阪のバイオの強みとは何か。一言でいうと、「研究所もあって、本社もある」ことだと森下さんは言う。大阪大学、京都大学などライフサイエンス分野に強い大学の存在も、この地のバイオにとって大きなアドバンテージだ。一方、江戸時代以来の伝統を汲む大手製薬企業の本社が、今なお道修町周辺に多く存在する。今やビジネスの中心、金融の中心は東京であるから、大阪の産業は放っておくと埋没しかねない。だからこそ、直接大阪から直接世界に発信できる産業でないと、大阪に残る必然性がないということになる。
  「そういう意味では、製薬産業というのは東京抜きで世界に発信できるし、世界の中で評価される産業です。しかも世界中からお金を稼いできますから、将来の大阪のエンジン産業として非常に重要な分野だというのは間違いないと思います。」
  しかしながら、課題がないわけではない。
  「かつて大阪にあった、産学連携のよき伝統がいったん途切れてしまったことは残念。また、資金投下も重厚長大型がまだ中心的で、ハード面には関心を示すけど、研究開発などソフト面には淡白な傾向もある。」
  と森下さんは言う。さらに、東京に比べシンクタンクが弱いなどソフト面を取り巻く環境の脆弱さにも問題を感じているという。近年、少しずつ状況は変わりつつあるが、企業の収益や個人の資産が、社会的な目的のため基礎研究などに還流する仕組みづくりは、これからの社会に必要だろう。幸い大阪には今なおエンジェル的な企業家は多いし、メセナ的な伝統も生きているので、可能性はあると森下さんは感じている。実際、子や孫の世代のことを考えて、研究を支援する企業家もいるという。  


適塾―ここに全国から俊才が集まり、近代日本を担う傑物が輩出した(大阪市中央区北浜)
  バイオについて言うと、歴史性と先端性が共存している大阪のような地域は世界でも珍しく、こうした点はもっと誇ってもいいという。大阪に息づくそういったストーリーを大事にしながら、次世代への夢を育んでいくことが、大阪が自らの手で活力を取り戻し、新たな魅力を発揮していくことにつながっていくのだろう。  「大阪はプライドがなくなったら終わりですよ。民がつくってきたまちという大阪のストーリーやプライドを大事にしないと。」
  インタビュー終盤のこの一言が、大阪の課題も展望も集約しているように感じた。

平成19年11月16日
(大阪ブランド情報局 小村みち)

プロフィール

森下竜一(もりしたりゅういち)
大阪大学大学院医学系研究科教授(臨床遺伝子治療学講座)。アンジェスMG株式会社取締役・創業者。岡山県出身。医学博士。昭和62年大阪大学医学部 卒業、平成3−6年 米国スタンフォード大学循環器科研究員、大阪大学助教授大学院医学系研究科遺伝子治療学を経て、平成15年より大阪大学教授大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学(現職)。経済産業省構造改革審議会知的財産部門委員、文部科学省学術科学審議会委員などを兼任。平成15−19年まで知的財産戦略本部本部員(本部長 内閣総理大臣)を務める。
 

■参考HP
大阪大学大学院医学系研究科 http://www.med.osaka-u.ac.jp/index-jp.html
アンジェスMG株式会社 http://www.anges-mg.com/
Doctors Blog(医師が発信するブログサイト) http://blog.m3.com/