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おかけんた
應典院
ART OSAKA
からほりまつアート
digmeout
前衛性×娯楽性×野外劇→維新派
銅版画×パステル 安井寿磨子
芸術家×職人→マツモトヨーコ
駄洒落×アート→現代美術二等兵
刻×フレキシビリティ→名和晃平
インスタレーション×映像 → 松井智惠
#5「万博×未来の廃墟→ヤノベケンジ」
#4「ドライブ×ノイズ→ログズギャラリー」
#3「セルフポートレイト×美術史→森村泰昌」
#2「聞く(=音)×見る(=アート)→藤本由紀夫」
#1「淀川×ゴミ×アート→ 淀川テクニック」
 
 
 
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おかけんた

コレクターとしてアートの面白さを伝えたい!

應典院外観

おかけんたさん

 漫才師のおかけんたさんには、もうひとつの顔がある。それは、現代美術のコレクター。近年は、作品を収集するだけに留まらず、トークやブログなど、アートの送り手としての活動も盛んに行なっている。

 アートの世界も他の分野同様、様々な角度から多くの人の関わることによって動いている。アーティストは作品を制作し、発表する。ギャラリーやキュレーターは、アーティストを育て、作品発表の機会の場を設け、プロデューサー的役目を果たす。彼らによって、私たちは多くの芸術作品と出会うことができる。
そして、普段あまり表に出ないが、芸術作品の収集をするコレクターもアートの世界では欠かせない重要な存在だ。
 おかけんたさんは、20年ほど前からコレクターとして数多くの作品を選んで収集し、審美眼を養ってきた。現在も数多くの展覧会に足を運び、ブログを始めとして新聞や雑誌でのコラム執筆に加え、アート関連のイベントではガイドツアーやトーク、オークションの司会も務め、得意のテンポのよいトークで観客を惹きつけ好評を博している。
おかさんがアートに触れるきっかけとなったのは、意外にも部屋のインテリアだったという。

<中央>小山田徹によるインスタレーション<左>展示風景。左の窓からはお墓が見える<右>remoによる映像上映

<左>ART OSAKA2008 でのオークション(写真提供:ART OSAKA実行委員会)
<中央>アートフェア東京2008での会場ガイドツアー(写真提供:アートフェア東京)
<右>榎忠さんのアトリエにて

Q 芸術系の学校で学んだり、ご自身で作品を作っていたというわけではなかったのですね。

おか:はい。絵を見て綺麗と思ったり、写真を観て自分でも撮ってみたいと思ったことは全くありませんでした。
この道に入ったきっかけとなったのは、部屋の模様替え。揃えたスタイリッシュな家具に合うインテリアとして、あるアーティストのポスターを買いました。しかし、実際に部屋に貼ってみると妙に合わなくて、その時に初めて「何やろな、絵って」と思ったんです。
自分が納得するものを求め続けるという性格なので、その後すぐに同じ店に行って納得のいく作品を探し出したのですが、それが抽象画でした。その絵を飾った瞬間、部屋が見違えるように変わり、そして、何よりも変わったのは自分でした。今まで全く興味のなかったものに対して興味が湧いて、いてもたってもいられなくなった。そこから画廊めぐりが始まったのです。

Q 現代アートとの出会いはいつ訪れたのでしょう?

おか:最初は百貨店の画廊をまわり、ギャラリーガイドも参考にしながら色々観てあるきました。コレクターの師のような人に出会ったことも大きくて、それまでカラフルな作品に惹かれていたのですが、モノトーンの作品にも興味を持つようになり、幅が広がっていきました。
草間彌生さんの作品をきっかけに、現代アートに深く入り込んでいきます。具体美術協会など関西のアートシーンを知り、関西を代表するアーティストである森村泰昌さんの展覧会を観たのが衝撃でした。作品を通じて様々な人との出会いがあり、今まで存在すら知らなかったオープニング・パーティーに招待されたり、アーティストと話をする機会も増えていきました。

Q 何を基準に作品を選びますか?

おか:直感的に観て、良いと思ったら、ですね。自分で勉強するのはもちろん、興味を持った作品について、ギャラリストに色々話を聞いたりします。ブランドものの商品が欲しくなるように、有名なアーティストの作品が欲しい、という訳ではありません。作品を購入して満足するだけではなく、その作品をどう生かすか、ということも視野に入れています。
ギャラリストはアーティストを選び育て、利益を生みだす。アーティストは芸術性を高め、評価を得ていく。コレクターは良い作品を購入する、という三者が良い関係を保ちながらお互いが切磋琢磨する必要があると思います。

Q 関西外の展覧会にもよく足を運ばれていますが、コレクターの視点から関西のアートシーンを見て感じる事は?

おか:同じアーティストでも、関東では作品が完売しているのに、関西では殆ど売れていないという状況が多々あります。もちろん、興味を持っている人の多さなどもあるとは思いますが、非常に残念です。
加えて、大阪には芸術系大学が一つしかありません。そうなると、大阪で個展を開く人が少ない、やがて観る機会が減ってくる…と今後の大阪のアートシーンにも影響が出てくるでしょう。
とはいえ、関西出身でとても良い作品を作るアーティストは多いですし、私もおもしろいと思った若手のアーティストに出会ったら、展覧会に足を運んでみてと宣伝したり、積極的にギャラリーを紹介したりしています。
大阪でお笑いが育った理由は、芸人たちが道を歩いていると、通りすがりの人々が「こないだのアレ、面白かったやん!」と声をかけてくれるからです。正直でフレンドリーな大阪人気質は、いい役目を果たしているでしょう?そういう人々にもアートを知ってもらうためにも、もっと大阪に根づいていけばいいと思うし、そのために私も活動しています。

Q おかさんのブログを見ていれば、週替わりで行なわれる展覧会情報がわかると評判ですね。

おか:情報誌のように紹介しているわけではなく、自分のアンテナに引っかかったものを載せています。評論家の方々は、作品の芸術性を追求して書いている。私は、面白いと思ったものをコレクターの視点からどう表現しようかと考えていて、実際に展覧会に足を運んでください、そして面白いと思ったらじゃあその作品を買ってくださいというメッセージを込めて書いています。
私のブログがきっかけで、人が色々な作品に出会っていく—導火線のようなブログになればと思っています。

 インタビューを通して、おかさんのアートに対する真摯な態度と情熱が伝わってきた。メディアに溢れる沢山の情報を受け取るだけでは物足りない。熱意を持って面白さを伝える人がいてこそ、アートシーンも活気づいていくのだ。

筆者プロフィール
木坂 葵
1978年生まれ。神戸大学文学部卒業。在学中より大阪のアートNPOにてコーディネーターとして勤務。その他、関西を中心に美術の裏方業務経験を積む。現在、水都大阪2009 アート部門キュレーター。