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インスタレーション×映像 → 松井智惠
#5「万博×未来の廃墟→ヤノベケンジ」
#4「ドライブ×ノイズ→ログズギャラリー」
#3「セルフポートレイト×美術史→森村泰昌」
#2「聞く(=音)×見る(=アート)→藤本由紀夫」
#1「淀川×ゴミ×アート→ 淀川テクニック」
 
 
 
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ドライブ×ノイズ→ログズギャラリー

 現代アートの特徴に「何でもあり」がある。絵画や彫刻などのジャンルにこだわる必要はないし、素材も自由に選んでよい。例えばこれまで当欄に登場した人たちを見ても、淀川テクニック=ゴミ、藤本由紀夫=音、森村泰昌=美術史とバラバラである。そして今回紹介するのも、やはりジャンルの外側にいる2人組。彼らが用いるのは自動車と音。世にも不思議なドライブと音響の合体である。
 ログズギャラリー(rogue's gallery=前科者写真台帳)なる物騒な名前のこのユニットは、浜地靖彦と中瀬由央により1993年に結成された。その4年前、高校3年生の夏に大阪芸術大学のサマースクールに参加した2人は、趣味の音楽の話などで意気投合。同校へ進学後は軽音楽部に所属しながら、アート、音楽、映画などに没頭する日々を過ごす。当時彼らが傾倒していたのは、自作のロボット同士を闘わせる過激なパフォーマンスで知られるSRL(サバイバル・リサーチ・ラボラトリー)やボアダムズに代表されるノイズ系音楽など。特定のジャンルではなく、形容不可能なサムシングを持った破格の表現に、彼らは強く惹かれていたのだ。
  そしてある日、二人はドライブ中に大きな発見をする。ジャンクパーツ屋で購入したFMトランスミッターを試した時に鳴ったハウリングノイズを聞いて、車窓の風景がいつもとは違って見えたのだ。この体験にピンと来た二人は、高性能の音響システムを搭載した自動車(シトロエンXM-X)に観客を乗せ、走行中に発生する様々な音にエフェクトをかけたサウンドを聞かせなる体感型パフォーマンスを創造。『ガソリンミュージック&クルージング』と題し、活動を1994年からスタートさせた。

  その詳細はこんな具合。某日某所にて待ち合わせし、シトロエンの後部座席に座る。ドライバーは浜地、ミキサーは中瀬。観客は最大2名。所定のコースに入るとスピードを上げ、同時に自動車のエンジン音やウインカー音などにエフェクトをかけた大音響が身体を包み込む。流れる風景、轟く音響、シート越しに伝わる振動。その時ドライブはアートへと変化し、観客はスピードとサウンドによる異次元的世界を垣間見ることになるのだ。現在まで約300回・600名の人々がこのドライブを体験。他にも、停車状態で行う『デモンストレーション』や、音響製品のみを使ったインスタレーション作品『RESIDUAL NOISE』などの作品が知られている。
 現在彼らは、『ガソリンミュージック&クルージング,日本横断,2006−2007』を全国各地で行っている。昨年9月に北海道をスタートし、青森、愛知、神奈川、香川、和歌山、兵庫、広島、高知、岡山を走破。今後、山口、九州方面へと歩を進める予定だ。今や全国的な存在となったログズギャラリー。彼らのことを知らなかった大阪人は、今すぐ認識を改めるべきだ。我が地元にはこんな超個性的アーティストがいるのだと。
2007年10月15日
(美術ライター 小吹隆文)
写真提供:空間実験室2006n