まちづくりとアートを絡めたイベントは、昨今日本全国で行なわれているが、からほりまちアートほど毎年賑わいをみせているところはないだろう。その魅力は、下町の匂いの残る大阪の風景とアートがほどよく調和しているところにあるようだ。
参加アーティストからは、観た人の反応がダイレクトに返ってくるので嬉しいという声が多く、毎年参加するリピーターもいる。展示というスタイルに限らず、似顔絵描きなどもあり、来場者との会話も弾む。
昨年は悪天候にも関わらず、2日間で約1万人もの人が空堀を訪れた。運営スタッフは、年齢も職業も異なる人々から構成されており、街の人気や注目度も伺える。
からほりまちアート実行委員長を勤め、ご自身も空堀在住である有馬直人さんに話を伺った。
<左>カメラを片手に観てまわる人も多い <右>商店街の中で似顔絵を描いてもらう
Q: からほりまちアートのコンセプトはどのようなものですか。
トタン板の色に合わせた作品
有馬:アートをもっと身近なものに感じてほしい。アートと共に街も見てもらい、からほりの良さを再認識してもらいたい。人と人とのつながりを大切にしたい。この三つです。
特に三つ目は、できる限り後世に伝えたく残したい部分です。長屋文化には、建物の趣きのみならず人と人との丁度良い距離感があり、昔ながらの良き道徳性やルール、マナーがあります。今の賃貸マンションなどでは、皆、表札も掲げず隣近所に誰が住んでるいのか分からない、というようなこともあり、そんな空間の中で育つ子供達もいるのかと考えると非常に将来が不安であり、だからこそ、このような古き良き長屋文化を継承して行かねばならないのでは、と強く思います。
Q: からほりまちアートでは、「展覧会」然とした堅苦しさや仰々しさはなく、まちの雰囲気と同じゆるやかさを感じます。
有馬:そうですね。からほりのように街を舞台にする以上は、その街のことも意識して全てをバランス良く進める必要があります。
出展するアーティスト達には、できる限り納得のいく空間を提供して、それに対して彼らが上手く空間を捉えて表現できていることが、来場者の好評を得ている理由ではないかと思います。
Q: 作品展示に関してはどのように進めていますか。
カフェでの展示風景
有馬:応募していただいたアーティストは、ほぼ受け入れる形をとっています。開催当初は、近隣住民にイベントの趣旨内容を説明してもなかなか理解してもらえず苦労しましたが、やはり回を重ねる毎に説明せずとも受け入れてもらえるようになりました。一人のキュレーターが決めるのではなく、年齢も職業も様々な有志の実行委員が、一人につき3-4人のアーティストを受け持ち、展示場所提供の承諾を得られる所からふさわしい作品を選び、アーティストと相談して進めていきます。
Q: 街とアートの関係性をどう考えますか。
若いスタッフが丁寧に案内をしてくれる
有馬:アートをもっと身近なものに感じてほしい。アートと共に街も見てもらい、からほりの良さを再認識してもらいたい。人と人とのつながりを大切にしたい。この三つです。
特に三つ目は、できる限り後世に伝えたく残したい部分です。長屋文化には、建物の趣きのみならず人と人との丁度良い距離感があり、昔ながらの良き道徳性やルール、マナーがあります。今の賃貸マンションなどでは、皆、表札も掲げず隣近所に誰が住んでるいのか分からない、というようなこともあり、そんな空間の中で育つ子供達もいるのかと考えると非常に将来が不安であり、だからこそ、このような古き良き長屋文化を継承して行かねばならないのでは、と強く思います。
「アートって、おもしろいかもしれんなあ。」
からほりまちアートを散策中、すれ違った老夫婦がそう話しているのを耳にした。
都心にありながら、ゆったりとした時間が流れているように感じられる長屋の街並みは、訪れる多くの人々を魅了する。そのような場所に作品を置くことによって、観る者は新たな意識を喚起させられたり、普段は見過ごしているものに気づくことがある。アートが美術館やギャラリーといった特定の人が目的を持って集まる場所を出て、周りにある生活の場や風景に溶け込む。五感を使って何かを見いだし気づく事こそアートの本質でもあり、空堀はそんな出会いの場となっている。