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大阪万華鏡 アート#1「淀川×ゴミ×アート→淀川テクニック」
淀川テクニックの二人
淀川といえば、大阪府北部を代表する一級河川として誰もが知っているだろう。しかし、その淀川を舞台に日夜アート作品を作り出す二人組がいることをご存知だろうか。柴田英昭と松永和也による「淀川テクニック」(以下、淀テク)がその正体である。
彼らは淀川をアトリエとし、素材も淀川から調達している。大都会を流れる大河だけあって、淀川には驚くほど様々な物が漂着する。また、(残念ながら)不法廃棄物も非常に多い。普通なら厄介者とし
て忌み嫌われるそれらゴミが、彼らの手にかかると少々すっとぼけた風合いを持つアート作品に生まれ変わるのである。
例えば、初期の代表作ともいうべき『オン・ザ・宇宙』。河川敷に自生した大木に、拾った様々なボールを吊るした作品である。葉が散った冬にはその全貌が姿を現し、だだっ広い河川敷の一本の木に小宇宙が宿ったかの如きポエティックな世界が現れる(その後河川工事で木が切り倒されたため消滅)。また、『チヌ』という魚の形をした作品は、自転車(もちろんゴミ)の周囲にゴムや金属など様々な素材を組み上げたもの。
これも過去に一度放火により消失したが、その後『釜山ビエンナーレ』(2006年)で復活を遂げている。野外作品の唯一の例外は十三大橋のたもとにある『鳥居』。本作は国土交通省の粋な計らいで常設されており、いつでも見ることが可能だ。彼らは他にもゴミを生鮮食品のようにパッケージした作品など、画廊や美術館で展示できる作品も多数制作している。
こうして日々淀川で
ゴ
ミ
ュニケーションしている淀テクだが、彼らの世界を構成する要素は決してゴミだけではない。河川敷の自然や四季、生き物たち(野犬、クラゲ、etc.)、住民(ホームレス)、定期的に開催する「淀川ピクニック」なるイベントに参加するファンや友人たちとの交流、そんな一見アートとは無縁の事柄諸々が彼らの作品にはしっかり染み込んでいる。そして、染み込みながらもセンチメンタルにならず、安易にメッセージに走ることもなく、あきれるほどあっけらかんとアートの常識を突き抜けていく。その逞しさ、天然の輝きこそ淀テク最大の魅力なのである。
上 『オン・ザ・宇宙』 2004年 淀川河川敷
下 『チヌ』 2004年 淀川河川敷
courtesy of the artist and yukari-art
大阪人は昔から、家柄よりも才覚で挑戦する者を賞賛する。アート業界の主流から随分とはみ出た淀テクはその資格十分である。また、都市の都市たる所以に流入者が作り出す文化があるとするならば、共に大阪出身ではない彼らは、やはり有資格者である。かつて私が取材した際に、淀川について「ここにいると故郷にいた時のような気持ちになれる」と語った彼ら。都市の繁栄と矛盾を孕んだ場でありながら、緑と水辺と大きな空が残された淀川だからこそ、この特異な才能が育まれたのであろう。だから私は断言したい。淀テクは大阪でしか生まれ得ないアーティストであると。
2007年7月5日
2003年、同じ専門学校に通っていた柴田英昭(1976年、岡山県出身)と松永和也(1977年、熊本県出身)により結成。『GEISAI』(5で銀賞)、『キリンアートプロジェクト2005』(グランプリ)、『釜山ビエンナーレ』、『取手アートプロジェクト2006』、『'SCOUTED! 淀川テクニック'展』(ギャラリー・エス、2006年)など展覧会歴多数。
淀川テクニック「淀川ことわざ道場」
7月1日(日)〜16日(月) 11:00〜17:00(最終日は16:00まで) 7/8(日)休
会場:アートカクテル
大阪市北区中津3-1-24
TEL 06-6371-0012 E-MAIL
info@art-cocktail.net
URL
http://www.art-cocktail.net/
※7/8(日)
「淀川ことわざピクニック」
を淀川にて開催。詳細はブログでご確認を。
http://yodogawa-technique.cocolog-nifty.com
※7/15(日)18:00〜20:00イベント
「アート化学反応」
をアートカクテルにて開催。
出演:アキラボーイ(お笑い芸人)/ せんり(大道フラメンコ)/ 山中カメラ(特殊写真家)
料金:前売1800円 当日2000円
問い合わせはアートカクテルまで。
著者プロフィール
小吹隆文
情報誌編集者を経て、2005年よりフリーの美術ライターになる。
主な執筆先は、京都新聞、美術手帖、ぴあ関西版、エルマガジン、artscape(ウェブ)など。
個人サイト「勝手にRECOMMEND」
URL
http://www.recommend.ecnet.jp/
ブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」
URL
http://www.keyis.jp/