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住めば都・水澄めばもっと都 〜水都のシビアな水質問題(後編)
住めば都・水澄めばもっと都 〜水都のシビアな水質問題(前編)
水都でお茶を ~ 食事と川が結びつく「おいしい水辺」
水の都は未来景〜 いまだ誰も「見ずの都」再生へのプロローグ
 
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住めば都・水澄めばもっと都 〜水都のシビアな水質問題(後編)

川はごみ捨て場 ?

回収された河川のごみ。子供の自転車や、何故か「東京23区推奨」のごみ袋も。水面のごみと網場に滞留したごみを収集して、最終的に大正工場で焼却処分される

  川を眺めていると、誰かが捨てた空き缶やビニール袋が流れてゆくのが見える。そして、船体に「水都大阪・川をきれいに!」と書かれた船がそれらを収集する光景も。堂島川、土佐堀川などの市内の主要10河川を清掃する、(財)大阪市環境事業協会河川事務所の河川清掃船だ。船を操る職員さんに聞いてみた。大阪の川の様子はどう変わってきたのか、ごみの現状はどうでしょうか。
「以前は川もごみも重油まみれやった。それから比べたら大分きれいになったかな。今はペットボトルやポリ袋が多いね」と河川清掃歴25年のベテラン職員さんが答えてくれた。「季節の変わり目には冷蔵庫とかの家電類が目立つし、ウォーターレタス*1も年々増えてきてる」。注射器、動物の死体など不可解な投棄物もあるそうだ。思った以上に川には様々なモノが浮かんでいるらしい。

浮遊するごみを除去するネットコンベア船。清掃作業は一年中、毎日2回実施されている。他にクレーン船や曳船も使われており、それらのメンテナンスも重要な仕事のひとつ。

  1月中旬のある日、実際に清掃船に乗せていただいた。木津川の河川事務所から大川へ。1時間程度の航路だが、冷たい川風を浴びていると足先まで冷える。その間、職員さんは吹きさらしの船上に立ち、網のついた棒で大小のごみを黙々と船のコンベアーに上げてゆく。これは大変なお仕事だと実感させられる。特に除去が大変なのは、ソファやベッドなどの大きな家具だと言う。夏は魚の腐敗臭がひどいそうだ。回収されるごみの総量は年間約5000トン。1日平均で約18トンだが、多い時には70トン以上にもなるらしい。彼らがいなければ川はたちまち浮遊物で溢れてしまうだろう。「いまだに川をごみ捨て場やと思ってる人たちがいる!」。現場の憤りに、強く同感した。

※1ウォーターレタス
サトイモ科の外来種。和名ボタンウキクサ。葉が空洞になっており、水面を浮遊する。葉の表面には細かい毛が密生していて水をはじく。淀川での大量繁殖が年々深刻化している。航路の妨げになるほか、水面をびっしり覆うことで水中に光や酸素が供給されず、魚類が死滅するなどの問題も懸念されている。
右の写真は淀川を漂うウォーターレタス。今のところ焼却する以外に対策はない。堆肥、食用など、実験的な試みはあるものの、効果的な利用方法は見つかっていないようだ。

水都の水はどんな味?

明治時代まで大川の水は飲料水として売られていた。「青湾」は埋められたが、毛馬桜之宮公園のサクラやメタセコイヤなど、季節の表情が美しい憩いの場になっている。

  桜宮に「青湾」と刻まれた碑がある。そこはかつて、太閤秀吉が最も水が澄んでいると認めた名水の地だった。1895(明治28)年、大阪市初の上水がこの場所から送水された。年間予算の3倍の経費と3年余の歳月をかけて浄水施設を整備したのだ。この桜宮水源地は、以降1915(大正4)年まで、61万人の市民に井戸水などに頼らない衛生的な暮らしを供給し続けた。
1914(大正3)年に完成した柴島浄水場は、現在、桜宮よりも上流の淀川で大量の水を取水し、高度浄水処理(オゾンと活性炭を使った浄水処理方法)を行って、市域の約半分の水道水を供給している。現在の淀川の水質*2は、BODで1.2mg/L。なんと四万十川と同水準だ*3。当然、かつては臭い、まずいと言われた大阪の水道水も、今ではとても良くなった。 「なにわ育ちのおいしい水“ほんまや”」は、高度浄水処理された大阪市の水道水をペットボトルに詰めたもの。クセのないすっきりまろやかな水として、駅売店やホテルなどで販売されている。水道局によると、「大阪の水道水は“ほんまに”おいしくなっているのです。そのことを、もっと伝えたくて商品化しました」とのこと。「ほんまや」は、通天閣や海遊館など観光地での売り上げが良いらしい。大阪の水のイメージをくつがえすアイテムとして、ひそかに水都のイメージアップに貢献しているに違いない。

*2  平成17年度大阪市水道局検査より

*3 「平成17年度国土交通省 河川ランキング」による

桜宮水源地跡。当時のレンガ造りの取水口が保存されている。1965(昭和40)年、水道70周年を記念して、傍らに「大阪水道発祥之地」の碑が建てられた。

清らかな小湾を意味する「青湾」の碑。1862年、煎茶を普及させた売茶翁の百年忌に建てられた。落成記念には近くの大長寺などで大煎茶会が開かれたといわれる。



  水質やごみなど、大阪の川にはいろいろ問題がある。それでも、大阪人にとっては大事な大事な「命の水」。水都は「水がきれいで、おいしいところ」、いわば「澄み都」でもあってほしい。すぐには無理かもしれない。しかし確実にその日は近づいているようです。

2008年2月12日
(NPO 法人水都 OSAKA 水辺のまち再生プロジェクト理事  コバヤシタクジ)
 

■関連リンク
水道記念館

柴島浄水場に隣接する水の博物館。琵琶湖・淀川水系の淡水魚の展示や、水道の歴史などを紹介している。
入館無料。月曜定休。9:30〜16:30(入館は16:00まで)
http://www11.ocn.ne.jp/~kinenkan/

1914年から1986年まで大阪市の主力ポンプ場として活躍した、赤煉瓦と御影石の建物を保存活用して展示室にしている。


なにわ育ちのおいしい水“ほんまや”特設サイト
大阪市水道局が運営する「ほんまや」の特設サイト。ブラインドテストでも約7割の人に「おいしい」と評判だった「街の声」など。
http://www.city.osaka.jp/suido/honmaya/index.html

ピンク色のラベルは賛否両論らしいが、普通に青系統の色だったらインパクトが弱くて話題にならなかっただろう。500mlで税込100円。


淀テク日記
ごみをアートに変える人たちもいる。淀川河川敷の漂流物などを使って独創的な環境芸術を創作するアートユニット「淀川テクニック」のゴミュニケーションの日々を綴るブログ。
http://yodogawa-technique.cocolog-nifty.com/nikki/
※淀川テクニックは当サイト「アート」の#1に登場しています。

 
著者プロフィール
コバヤシタクジ
本職のランドスケープデザインの傍ら、「NPO水辺のまち再生プロジェクト」理事、非営利市民団体「アメニシティおおさかネットワーク」代表など、地域魅力の発掘や利活用を目指した市民目線のまちづかい活動を実践。技術士(建設部門:都市及び地方計画、建設環境) 
weblog http://ameblo.jp/amenicity2005/