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水都
川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(下)
川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(中)
川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(上)
水都の桜物語 〜冬を耐え苦難を超え、咲くやこの花
水都の桜物語 〜冬を耐え苦難を超え、咲くやこの花
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水都でお茶を ~ 食事と川が結びつく「おいしい水辺」
水の都は未来景〜 いまだ誰も「見ずの都」再生へのプロローグ
 
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水都でお茶を ~ 食事と川が結びつく「おいしい水辺」

「天下の台所」の土台は舟運だった

 江戸時代、大阪(大坂)には諸国の特産物や物資が集まり、消費地・江戸へと大量移送していた。大阪が生産物を蓄積する「天下の台所」と呼ばれ、それらを下流へと送り出す「上方」と呼ばれた理由である。
その足回りは、菱垣回船や樽廻船といった長期航路と、淀川や堀川を行き来するたくさんの船だった。当時の関東には生産力が圧倒的に不足していた。大阪には優れた水運技術があり、中央に依存しない銀本位の貨幣システムがあった。かくして大阪は日本の経済の中心地となった。
  大いに繁盛したがゆえに食道楽も多かった。かどうかは知らないが、天下の台所だけに、昆布や米など、常に上物が集まっていた。それで大阪は「食い倒れ」「美食のまち」と呼ばれるようになったのだろう。
  もっとも「食い倒れ」は、「杭倒れ」が語源ともいわれる。舟運が発達し、水路が増えて、橋や護岸の杭が多くなる。それらの管理が必要になり修繕費がかさむ。ついには破綻する「杭倒れ」。八百八橋のほとんどが民設だった大阪だから、この説の信憑性は高い。

大阪随一のフレンチレストランが水辺に
 現在の大阪の経済状態はとても好調とは言えないけれど、美食が集まる食文化のまちとしては健在だ。川を見ながらの食事やお茶を楽しめる店も近年少しづつ増えてきている。おいしい食事と水辺が結びつくところ、そこに水都のひとつの像がある。
 高級フレンチレストランの「ルポンドシエル」は、「天に架かる橋」を意味するその名の通り、30階からの眺望を誇る有名店だった。その店舗が、大林組旧本店ビルに移転し、2007年11月にリニューアルオープンした。超高層から水辺の近代建築へ。リスクが大きいのでは?。総支配人に聞くと「以前の店舗は大阪最初の高層ビルのシンボルだった。しかし高いビルがたくさん建った現在はその役割を終えた。これからは水辺の環境をつくり価値を高めることが新たな使命と考えています」と、力強い言葉が返ってきた。30階から見下ろせば、蛇行する大川と公園の緑が織りなすダイナミックな自然と、都市との共存が光景として広がっていた。これからは、より近い距離でそれらをお客様に感じてもらえるのが楽しみだという。大阪随一の名店は、水都を代表するレストランとして新たなスタートを切ったのである。

大林組旧本店ビルは道路側と同じように川側にも正面性を持たせたデザインになっている。川に面し、川に顔を向けた貴重な近代建築である。

夜になれば、このネオンサインが堂々と水辺に灯る。条例で店名の広告を出すことはできないので(ビル名は可)、ビル名を「ルポンドシエルビル」と改称して、この看板を掲げたとのこと。

3F宴会場から見た土佐堀川。地下には「左岸」に因んだ「さがん」という和食店もオープン。「近隣の老舗和食店や有名イタリアン、対岸の天神橋筋商店街とも協力して地域を活性化できれば」と総支配人は話す。

水辺のステキを教えてくれるテラス

ダイニング・アップリケの川辺のテラス。天神祭りの時には船渡御が眼下を通り抜ける特等席。このテラスに魅了された人々の思いが、後に東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)へと繋がっていった。
 東横堀川に面するカジュアルイタリアン「ダイニング・アップリケ」には、川を眺めるテラス席が設けられている。東横堀川には鬱陶しい高速道路が架かっているが、このテラスのカウンターは高さが絶妙で、座れば頭上の高架は気にならない。眼前には川の流れが広がり、爽やかな風やゆったりとした時間の流れを感じる。まるで京都の川床か、船上のバーにいるような快適さだ。店のオーナーは、ビルの建設途中に堀川を通る天神祭の船渡御を目にして、急きょテラスの整備を決めたのだそうだ。類のない施設だけに、オーナー自ら試行錯誤して床や窓を作り上げたとのこと。2002年のオープン以来、たくさんの人がここで食事を楽しみ、水辺の価値を実感してきた。このテラスが水辺のまちづくりに果たしてきた役割は大きい。
 水辺を愛する私たちは、こうした店に勇気づけられる。おいしい水辺のあるまちにもっと誇りを持とう。
 

2006年の「OSAKA光のルネサンス」風景。イルミネーション装飾された船たち。
  この季節、忘年会などで食い倒れる人もおられるだろう。どこで飲むのも自由だけれど、水辺はイルミネーションやライトアップで華やいでいる。このsweetな水都の夜を楽しまなければ、倒れるどころか悔いが残るかも。大切な人やご家族との一時は、ぜひ水辺のお店で。
2007年12月6日
(NPO 法人水都 OSAKA 水辺のまち再生プロジェクト理事  コバヤシタクジ)
 
■大林組旧本店ビルについて
大林組の本社として1962年(大正15)に竣工。スクラッチタイルの外観とテラコッタによる装飾が特徴的な大正モダニズムの名建築。ファサードの肩にはラテン語で竣工年が記されている。1973(昭和48)年に大阪初の超高層ビルである現本店ビルが対面に建てられ、本店機能は移動。その後、学校施設を経て、現在は「ルポンドシエルビル」と改称。
 
■関連リンク
ルポンドシエル Le Pont de Ciel
フランスの3ツ星レストラン「ル・グランヴェフール」と業務提携。移転後はじめてのクリスマスを迎え、12月は「ルポンドシエルのグランメゾンクリスマス2007」として特別メニューを提供する。
(12/14(金)〜12/25(火))
大阪市中央区北浜東6-9 ルポンドシエルビル1F TEL. 06-6947-0888
http://www.pont-de-ciel.co.jp/

ダイニング・アップリケ
昼はのんびりランチ、夜はしっとりムーディーなバーとして楽しめる店。店内はオランダのカフェバーを思わせ、イタリアン&フレンチのフードも充実しており、会社帰りや大切な人との食事などさまざまな利用ができる。
大阪市中央区内平野町3-3-4 TEL. 06-6947-7887
アクセスは http://www.e-yokobori.jp/
※東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)HP 「水辺マップ」へお入り下さい。

OSAKA光のルネサンス2007
2003年より、毎年年末に中之島で行われている光のイルミネーション・イベント。みおつくしプロムナード、大阪市中央公会堂、中之島図書館、バラ園などに幻想的なイルミネーションやライトアップを施し、冬の風物詩として観光客や市民を楽しませている。
2007年の開催期間は、12月1日(土)〜25日(火) 17:00〜22:00
会場は大阪市中之島の大阪市役所周辺、中之島公園、その他。
問い合わせ:OSAKA光のルネサンス実行委員会事務局 info@hikari-renaissance.com
http://www.hikari-renaissance.com/
 
著者プロフィール
コバヤシタクジ
本職のランドスケープデザインの傍ら、「NPO水辺のまち再生プロジェクト」理事、非営利市民団体「アメニシティおおさかネットワーク」代表など、地域魅力の発掘や利活用を目指した市民目線のまちづかい活動を実践。技術士(建設部門:都市及び地方計画、建設環境) 
weblog http://ameblo.jp/amenicity2005/