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川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(下)
川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(中)
川のねきへ行きまひょうや 〜大阪川床「北浜テラス」誕生(上)
水都の桜物語 〜冬を耐え苦難を超え、咲くやこの花
水都の桜物語 〜冬を耐え苦難を超え、咲くやこの花
住めば都・水澄めばもっと都 〜水都のシビアな水質問題(後編)
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そして船はゆく 〜つながるひろがる・水都の観光

八軒家浜がついに再生


雑誌の表紙やKカードの題材にも使われる有名な
鴨川の川床。
夏の納涼床は90軒以上で、懐石、フレンチ、ショットバー、
カフェなど店舗も多彩。

 京都を代表する風景のひとつ、鴨川納涼床。鴨川のせせらぎと川風を間近に堪能しながら、美味しい食事を楽しむことができる、夏の風物詩だ。もともとは、京の蒸し暑い無風の夏を前向きに楽しむ知恵だったらしい。それは、やがて古都に相応しい風情と佇まいを生み出し、人々に愛されて江戸の昔から現代に受け継がれている。
 水都を自負する大阪にも、このように川を積極的に楽しむ装置があるべきではないか。「大阪の川辺にも京都の川床のような風物詩を」「川と陸がつながるほんまもんの水都にしたい」。そう願う川辺の飲食店の店主、ビルオーナー、地域の魅力再生をテーマに活動するNPOたちが徐々に集結し、着々と「大阪版川床」の準備を進めていった。
 そして、熱意と知恵が結実し、2008年10月、ついに大阪川床「北浜テラス」が実現する。 今回川床が実現したのは、三休橋筋から東横堀川までの土佐堀川左岸に面する「イタリア料理・OUI」「手打ちそば・てる坊」「泉州魚料理・十六夜北浜店」の3店舗。2008年10月1日から31日までの1ヶ月の限定運営となる。


オープンした大阪川床「北浜テラス」(手打ちそば・てる坊)。
川面を渡る風が心地よい。

川のねぎは特等席

 最近はあまり聞かれなくなったが、「ねき」という関西弁がある。鴨(川)とくれば、煮ても焼いても旨いネギ。ではなくて濁音のない「ネキ」。「かたわら」「近く」という意味だ。例えば以下のように使う。

「さあさ、川のねきへ行きまひょうや。涼しおまっせ」。

 料亭の若女将が言っていると思って下さい。ちなみに、このセリフの前が「暑いなあ。ビール一杯もらおうか」で、これは料亭のお客さんが店に着くなり注文しています。それを受けて「わかりました、どうぞこちらの席で涼んでください」と案内しているわけである。夏の川は特等席だ。直後には「おお、ええ風やなあ」という愉しげな嘆息も聞こえる。川辺の夕暮れに、冷えたビールの悦楽・・・・ 実は、1930(昭和5)年の大阪の風景だ。これは、SP盤『今昔浪花の夏(昭和時代)』(長谷川幸延:脚色 長谷川卓雄:指揮 日東音楽描写団:演)で描写された大大阪時代の音スケッチである。


 長谷川幸延(1904〜1977)は、JOBK(NHK大阪放送局)の開設と共に、嘱託ライターとしてラジオドラマの開拓に寄与した作家。『今昔浪花の夏(昭和時代)』は、寸劇と音響描写で大阪の都市風景を切り取ったもので、ラジオの野球中継、ジャズの活況、主人が避暑に出かけた直後に番頭や女中が(鬼の居ぬ間に)街へ繰り出す場面、御堂筋の喧噪など、当時(および近未来)の風俗が活き活きと、面白おかしく描かれている。
 これを聞くと、昭和初期の料亭には川辺の眺めの良い特等席があり、それが浪花の夏の代表的風景だったことが良くわかる。大阪川床「北浜テラス」は、そうした楽しみを現代に復活させる仕掛けになるだろう。新しくて懐かしい川辺のシーンの再生である。 しかし川床の実現には多くのハードルがあった。(続く)。

『モダン心斎橋コレクション―メトロポリスの時代と記憶 /橋爪節也著 』(国書刊行会)
日本屈指の大繁華街「心斎橋」の歴史を、戦前のモダンな時代を中心に、絵はがき、広告、雑誌等の美しいグラフィックにより紹介したアート・ブック。 音楽ライターの毛利眞人氏が監修した付録のCDで、『今昔浪速の夏』を聞くことができる。その他『大阪行進曲』『大大阪地下鉄行進曲』なども収録。『大阪見物』は昭和10年頃の観光バスの案内をそのまま吹き込んだもので、大大阪のバーチャル遊覧が可能。当時も道頓堀は汚かったようです!

2008年10月7日
(NPO 法人水都 OSAKA 水辺のまち再生プロジェクト理事  コバヤシタクジ)
 
■関連リンク

●鴨川納涼床の会
鴨川納涼床が楽しめるのは5月から9月までですが、ホームページでは納涼床のシーズンオフ中も、「鴨川の見える店」として、鴨川沿いのお店の詳しい情報を発信しています。
http://www.kyoto-yuka.com//

●大阪川床「北浜テラス」
大阪にも川床を!の想いが実現し、初めて大阪で川床が出ます。川風を感じながらの食事で水都大阪を満喫して下さい。そして新しい大阪の風物詩を体験して下さい。
http://www.osakakawayuka.com/

 
著者プロフィール
コバヤシタクジ
本職のランドスケープデザインの傍ら、「NPO水辺のまち再生プロジェクト」理事、非営利市民団体「アメニシティおおさかネットワーク」代表など、地域魅力の発掘や利活用を目指した市民目線のまちづかい活動を実践。技術士(建設部門:都市及び地方計画、建設環境) 
weblog http://ameblo.jp/amenicity2005/