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大川で洗濯。昭和11年(1936)撮影と推定される。かつて、渡船場の雁木(川に面した石段)は近所の人たちにとって格好の洗濯場であった。大阪城天守閣所有。
水上タクシーの船長などで活躍する水辺好きの女性が言った。「川に落ちると子供ができない身体になるらしいですよ」。マジで?。浸かっただけで?。苦笑。
「いやいやホンマらしいですよ」と本人は至って真剣だが、まあ、根拠のない噂だろう(と思う)。けれど、大阪一の水辺ラヴァーを自認する彼女にしてそこまでビビるくらいだから、一般人の感覚は推して知るべし。大阪の水、確かに危険そうに見える。
大阪の市内河川はもともと汚濁しやすい構造であるらしい。淀川の語源は「澱む川」だと言われているほどに、大川(旧淀川)の流れが緩く、さらに他の河川が末端で合流している。加えて、都市が吐き出す排水と、川に背を向けた開発が水質悪化に拍車を掛けてきた。戦後、川は臭い、汚い、危険な場所に変わり、以降、大阪の川のイメージとして定着。今日に至る。 |
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平成17年度の大阪市内水質汚濁現状。「大阪市環境白書(平成18年版)」より。
実際のところ水質はどうなのだろうか。平成18年版の「大阪市環境白書」によると、市内河川水域(12河川)のBOD*年平均値は2.8mg/L。かろうじて環境基準のB類型(3mg/L以下)に適合している。経年変化で見ると、1970年代には10mg/L前後なので、この30数年の間に飛躍的に良くなっているといえる。もっとも、寝屋川・平野川などは依然として汚濁が著しく、BOD8.1〜13mg/L。それらが大川に流れ込む天神橋付近は環境基準不適格の数値だ(堂島川で3.2mg/L、土佐堀川で5.4mg/L)。
タイガース優勝時のダイブで全国に悪名を轟かせた道頓堀はどうか。道頓堀川の水質は、平成12年の水門の整備によって向上している。道頓堀川下流部と東横堀川の2つの水門が大阪湾の干満に合わせて開閉し、汚濁した寝屋川の水の流入を止め、きれいな大川の水を道頓堀川と東横堀川に多く流す仕組みになっている。同時に、水位を一定に保ち、市街地が海水に浸かるのを防ぐ仕組みでもある。水門の効果で、道頓堀川の平成17年のBOD年平均値は2.3mg/Lと、良好を保っている。じゃあ泳げるのか?・・・・残念ながらできない。大腸菌群や一般細菌が多数検出されているのである。市内の下水道は合流式なので、大雨が降るとトイレや台所からの汚水が雨水と共に道頓堀川に流れ込んでしまうのだ。対策はあるのだろうか。大阪市建設局に聞いてみると、「平成22年度に完成予定の北浜逢阪貯留管が整備されれば、道頓堀川への雨水流出はほとんど無くなるので、大幅に水質が改善される見込みです。」と答えてくれた。平行して、下水管の浚渫をまめに行うなどの対策も現在行っているとのこと。将来的には期待が持てそうだ。
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※BOD(生物化学的酸素要求量)
河川の水質汚濁度を示す数値として最も一般的に使用されている指標。一定時間内に水中の有機物を微生物が分解するときに必要な酸素量を示している。数値が大きいほど汚濁が進んでいる。 |
2007年11月に架け替えられた新戎橋。川沿いの「とんぼりリバーウォーク」は現在も整備進行中。2010年をめどに1.3kmの区間で完成を目指す。
さて、きれいな川にするために、私たちにできることはあるだろうか?。雨水や生活排水が汚いと川が汚れる。だから、泥やゴミや煙草の吸い殻を排水溝に捨てないこと。台所の排水に油などを流さないこと。つまり、環境に優しい生活は川にも優しいということになる。水は循環するもの。「ぜんぶ水に流しましょう」ではなく、流した後を意識することが、水都住民にとっては大切なのですよ皆さん。まして、川にごみを捨てるなどもってのほか。次回は河川の清掃について。(後編へ続く) |
2008年2月12日
(NPO 法人水都 OSAKA 水辺のまち再生プロジェクト理事 コバヤシタクジ) |
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著者プロフィール
コバヤシタクジ
本職のランドスケープデザインの傍ら、「NPO水辺のまち再生プロジェクト」理事、非営利市民団体「アメニシティおおさかネットワーク」代表など、地域魅力の発掘や利活用を目指した市民目線のまちづかい活動を実践。技術士(建設部門:都市及び地方計画、建設環境)
weblog http://ameblo.jp/amenicity2005/ |
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