NPOが作成していた企画段階での川床イメージスケッチ
そば切り「てる坊」の川床。
対岸の中之島公園バラ園は残念ながら現在工事中。
川床を実現した飲食店3店のひとつ『そば切り「てる坊」』の店主、山西輝和氏は以前から川床に熱い思いを持っていた。「数年前に店を改築した時に、土佐堀川に面した開口部を足元までの掃き出し窓にしたんです。いつでも川床が出せるようにね。それで大阪市に川床を出したいと問い合わせてみたのですが・・・・」。答えは「許可できません」だったと言う。山西氏は明治創業の料理旅館の五代目である。大阪の川に人一倍強い愛着を持っている。かつて川のねきは料亭の特等席だった。そんな時代の賑わいをまちに取り戻したい。2年前、山西氏は「壊れてもないのに(笑)」設備修理の名目で作業用の足場を川へ張り出してみた。小さな川床実験である。天神祭の船が眼下を行き交う7月。「川床」からの風景は素晴らしく、川風が清々しかった。やっぱり諦めきれない。
カジュアルレストラン「oui」で実現した川床。
中央公会堂や大阪市役所を臨むロケーションを、
大阪は生かしきれてなかった
山西氏と、同じ思いを持ったNPOたちが出会うのは必然だった。「個々は弱い。力を合わせる必要がありました」。「もうひとつの旅クラブ」の泉英明氏は振り返る。「過去に例がない皆の夢を現実にするため、ビルオーナー、お店、河川管理者、都市デザイン・建築担当のすべてが合意できる事業スキーム、空間プランをデザインすることが、我々NPOチームの役割です。それが関係者で大まかに共有されてから、一気に大きな流れになったのです」。2009年に開催予定のイベント「水都大阪2009」事務局も彼らに合流し、川床を1年前のプレイベントとして盛り上げるべく、許認可に関わる様々な支援を行った。
行政も知恵を絞った。大阪府が中心となって中之島周辺の河川空間の規制緩和を進めていることも追い風になった。
こうして、公的性格を持つ「水都大阪2009実行委員会」が大阪府から河川の占用許可を得て、地元・NPO・オーナーの「北浜テラス実行委員会」とのパートナーシップを組むというスキームができた。
垣根は低くなり、立場を超えた協力体制のもとで大阪川床「北浜テラス」は実現へと前進していった。実施時期は10月。目標としていた夏を過ぎ、1ヶ月間限定の「一時占用許可」での実施となった。(つづく)
平成21年1月16日
(NPO 法人水都 OSAKA 水辺のまち再生プロジェクト理事 コバヤシタクジ)
筆者プロフィール
コバヤシタクジ
本職のランドスケープデザインの傍ら、「NPO水辺のまち再生プロジェクト」理事、非営利市民団体「アメニシティおおさかネットワーク」代表など、地域魅力の発掘や利活用を目指した市民目線のまちづかい活動を実践。技術士(建設部門:都市及び地方計画、建設環境)
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http://ameblo.jp/amenicity2005/