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香港、上海、ニューヨーク、ロンドンと、国境もジャンルをも飛び超えて活躍する、いま最も勢いのあるデザイナー、森田恭通さん。エッジの効いたゴージャスでアーティスティックな空間デザインのイメージが強い森田さんだが、当の本人はと言えば、いたってフラットな空気感、“素”な感性の持ち主だ。今回はそんな彼のデザイン観について、そして関西観についてストレートに語っていただいた。
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デザインってカタチから入ると思われがちだけど、そうじゃなくて実はメンタルな部分から考えていくんです。とくに僕は大阪のDNAが入っているせいか、普通のデザイナーより“商売”について考えます。たとえば大阪のベタな地域にオシャレなうどん屋さんを作っても美味しくなさそうでしょ?それよりもおっちゃんがやってて清潔で親しみやすい店の方が繁盛しそうじゃないですか。デザイナーって、そこなんですよ。アーティストと違って、商売が発展するように考えなきゃいけない。僕は流行る店ではなく繁盛する店を作りたい。期間限定のイベント的デザインではなく、長く愛されるスタンダードなデザインを提案していきたいと考えています。商売の原点って口コミです。店名は覚えてないけど人に伝えたくなる店ってあるでしょ。口コミのパワーってすごいですから。そういう口コミが起こるようなデザインを心がけています。 |
WATAMI(香港・居酒屋)
photo:Nacasa&Partners
MEGU NY(NY・JAPANESE DINING)
photo:Nacasa&Partners
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世の中に一つとして同じプロジェクトはありません。言わばデザイナーって仕立て屋さんみたいなもの。その人にあったものをオーダーメイドする感覚です。ただし僕はオーナーさんのリクエストを最優先すると同時に、そこに来るお客さん、そこで働く人たちがハッピーじゃないと商売が繁盛しないと考えています。つねに僕がオーナーだったら、お客だったら、スタッフだったらどうか、いろんな人間の視点をシミュレーションして、最終的にデザイナーとしてこれがベストだってプランをジャッジしています。
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キャリエールホテル旅行専門学校(京都・学校)
photo:SEIRYO STUDIO
りそな銀行(東京・銀行)
photo:Nacasa&Partners
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僕はプランが固まるまで、ペンを持たないんです。プランを考える時は静かな空間より、雑踏の中のカフェなんかで、ひたすらイメージの中で空間を歩きまわるんです。何もないコンクリートの壁をイメージして、ここにカウンターがあったらいいなとか、この壁が邪魔だとか頭の中で徹底的に歩くんですよ。そしてまずデメリットを洗い出す。で、そのデメリットをポジティブにとらえ直して、それが在るからこそできるものを考えるんです。すると何が必要で何が不要か必然的に答えが出てくる。たとえば看板が出せない路地の店なら、光を発して惹きつけるとかね。そこを抑えればお客さんもオーナーも喜ぶポイントが見えてくるんです。しかもアイデアはライバルの二番煎じじゃダメ。何でも一番煎じじゃないと。関西人って真似し嫌いでしょ(笑)。他にないオリジナリティを探さないと勝てないですから。そうやって予算も含めて頭の中で素材を組み合わせ、具体的にプランを整えていく。そして最後にひとさじ、ハッピーなサプライズを入れるんです。それもクスッと笑うくらいのウィットにとんだものがいい。みんなが指さして笑うようなものだと、すぐ飽きられてしまいますから。あくまでずっと長く愛されるものを作りたいんですよ。 |
TOKIAビル/コリドー(東京・ビル)photo:Nacasa&Partners
京福嵐山駅(京都・駅)photo:SEIRYO STUDIO
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昔と違って今はデザインのフィールドってボーダーレスになっています。僕自身もインテリアデザインだけじゃなく、オリジナル家具やシャンデリアなどの照明器具、時計、ジュエリーなどのプロダクトの商品開発も手がけています。でも発想の基本はいっしょ。つまり自分自身が「こんなモノあったらいいのに」って発想。こんなに世の中にモノが溢れているのに、自分が欲しいと思って買おうとしてもないモノって多いんですよ。だから自分で作るんです。年齢や時代とともに欲しいものは変化しますから、作りたいものは無限大にあります。今なら自分たちが入る老人ホームやお墓もデザインしたいですね(笑)。 |
ORIGAMI CHAIR(CIBONE/椅子)
TRAVEL TRUNK, TRAVELSOFA
(BALS TOKYO/テーブル・トランク,ソファ)
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いろんなクリエーターから刺激を受けますが、業界は違うけど僕と同じ手法の人って、たぶん鶴瓶師匠だと思うんです。あの方はプロですね。ウィットにとんだことをスレスレのクールさでやる。つねに相手の気持ちをわかっていて、若い人にはエッジを効かせて、おじいちゃんおばあちゃんへは親しみやすさを出す。モダンさとクラッシックをあわせ持ち、オートクチュールに落語やトークをする。そういう意味で、うちの奥さん(大地真央さん)も尊敬しています。彼女も伝統的なものもすべて学んだうえで、舞台を通して自己表現しているプロフェッショナルですから。結婚してからスケジュールを今までよりプライベート優先にするようになりました。疲れているといいプランが出ないし、人をハッピーにする仕事だから、まず自分自身がハッピーじゃないとね(笑)。
最近コラボレーションしておもしろかったのは、東京のカスタムペインターの倉科昌高さんと関西では絵師の東学さん。関西人は個性が強いと言われますが、たぶん素直で正直なんだと思います。クリエイトするって“素”の部分が一番大事です。ストレートすぎて誤解を生むこともあるけど、それが生き方ですからね。 |
2008年4月16日
(よしみかな) |
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森田恭通
1967年大阪生まれ。現場で積み重ねた経験を活かし、フリーランスとして活動ののち、潟Cマジンにてチーフデザイナーを務める。1996年、森田恭通デザインオフィスを設立。2000年6月にはGLAMOROUS.co.,ltd.として再スタートを切る。2001年香港プロジェクトを皮切りにニューヨーク、ロンドン、上海など海外へ活躍の場を広げている。またインテリアに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行っている。
http://www.glamorous.co.jp/ |
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筆者プロフィール
よしみかな
コピーライター&インタビュア。有限会社かなりや主宰。2008年よりイエローキャブWESTとのタイアップで関西の文化人のキャスティング&プロデュースをするプロジェクト「文花人」をスタート。
「文花人」 http://www.bunkajin.jp |