デザインとは何だろう。モノを美しくすること、使いよくすること―いずれにしても、その営みは何かを「つくる」ことと結び付けられている。衣服、工業製品、印刷物、建築物…ジャンルはさまざまだが、通常、何かを新たにつくり出すことにデザイナーは深く関っている。 しかし、今ないものをつくるよりもむしろ、既につくられたものの十分に活用されていないものを「使いこなす」ことこそ、これからの時代にはより必要とされるのではないか?そんな思いをもって、公園などの公共空間をフィールドに、先駆的な活動を展開している人がいる。大阪市北区に事務所を構えるランドスケープ・アーキテクト山崎亮さんだ。
山崎さんが公共空間の「使い方」にこだわる背景には、人口減少時代における都市の縮小化にどう対応するか、という問題意識がある。人口減は税収減に直結するから、これまで公金で管理運営されてきた公共施設のメンテナンスが難しくなる。メンテナンスが行き届かないスペースの増加は、まちの荒廃につながる。この課題に対応するには、住み手自身によるエリア・マネジメントが欠かせないと考えているからだ。 実は大阪は、人口減少の先進地だという。大都市の中でも人口減少のペースが速いのだそうだ。大阪郊外には多くの住宅地があるが、入居者が決まらないままの戸建住宅などが増えてきており、今はそれほど目立たないものの、やがてこの傾向がまちそのものの存続に波及するであろうことは想像に難くない。山崎さん自身が郊外の住宅地で育ったこともあり、「これから郊外がどうなっていくのか、その行方が非常に気になる。」実際そうした地域のフィールドワークもすでに始めているという。 いったん開発され人口が膨らんだ都市をいかに「小さくつくりなおす」か、今後の切実な課題になると山崎さんは考えている。そのとき、地域にどれだけ主体的な住み手がいるか。それがまちの魅力と活力を左右する。山崎さんが、「つくる」以上に「使う」ことにこだわる理由は、そこにある。誰かにお任せにするのでなく、主体的に公共スペースの運営を担い、地域に活力を生み出すロールモデルを提示すること。山崎さんの仕事は、地域そのものをデザインすることにほかならない。