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第三十話 しばく

「しばく」は、お下品な言葉である。だから、ハイソなみなさんや女性は、ほとんど使わない。
でも、一般ピープルが友だちレベルでぺちゃくちゃしゃべる時なんかには、漫才でもするみたいにぽんぽんと飛び交う言葉である。相手が何か軽いジョークやおふざけをしたりすると、それを聞いていた者がすかさず「あほォ、いっぺんしばいたろか」とか、「何言うとんねん、しばくぞ」といった調子で入れる合いの手になっている。東京弁でいうと、「ぶつわよ」とか「たたくよ」に近いのではないかと思う。まちがってたら、すんません。
いずれにしても、軽い合いの手なので、あまり深い意味はない。上方漫才なんかで使う「ええかげんにしなさい。チャンチャン」に近い。だから、言ってる本人が、ほんとうに相手をしばこう!なんてことは思っていないわけである。そんなことになると、いちびりが多い大阪では、そこら中でボカスカしばかれる人が続出してしまう。

「しばく」を辞書で引くと、「てのひらや棒、鞭(むち)などで強く打つ。たたく。ぶつ」「細い棒やひもなどを強くうち振る」といった意味があることがわかる。でも、大阪人が使うしばくは、もっと軽い。アメリカ人が仲間うちで使う、ヒップなスラングといったところだ。
もちろん、腹が立った時に本気で、「しばくぞ!」と言うときもある。これはTPOでニュアンスを判断するしかない。
こうした浪花スラングが一般的な大阪弁として全国に広まったのは、関西のお笑いタレントがテレビでしゃべりまくった結果であると言われている。相方がぼけると「何言うとんねん、しばきあげるぞ!」とか「こらぁ!どついたろか」といった具合で、ベリーお下品なのである。

でも、これが一般的な大阪弁と誤解されると、これもまた困りものだ。大阪弁といっても系統的には北方系と南方系があって、関西のお笑いタレントが広めた大阪弁は、どちらかというとやや言葉の荒っぽい、エネルギッシュな南方系の大阪弁なのである。文学でいうと今東光の八尾の朝吉・悪名シリーズに出てくる河内弁や、だんじりで有名な泉州弁なんかがその代表といえる。
一方の北方系はというと、谷崎文学に代表される船場言葉や、大阪の旦那衆がベッドタウンとした伊丹や西宮、芦屋あたりの阪神間言葉がその代表といえる。いまの文学でいうと、田辺聖子さんの小説やエッセイに出てくる関西弁は、実に味があって軽みもあり、かといって下品には落ちない、北方系大阪弁のいい面をきちんと伝えている。

船場言葉をいまでも流ちょうにあやつる古老や、阪神間の上品系関西人などは、関西のお笑いタレントがテレビでしゃべっているのを耳にすると、顔をしかめる人が多い。なぜなら、自分たちが愛しているはんなりやさしい関西弁、軽妙洒脱な大阪弁とは、かなり違うからである。
でも、時にはあの威勢の良い、お笑いタレント系の大阪弁を聞きたい時もある。例えば、ダウンタウンの松っちゃんが客に向かって、「ボケェ!しばきあげたろか」と吠えたりするのを見るのは、なぜか爽快である。現代人は、ああいう大阪弁に、一種のカタルシスを感じているのかもしれない。
だって、標準語であんな噛みつきを客にしたら、シャレになりまへん。即、クビでっせ。こういう許されかたができるのも、大阪弁のええとこかもね。

本日のスキット

食堂で友人同士の会話

Aくん 「なあ、ぼくの分のたこ焼き、食べてもええよ」
Bくん 「へえ、えらい今日はやさしいやん」
Aくん 「それ、ちょっとテーブルに落としてしもてん。よかったら食べて」
Bくん 「こら!いっぺん、しばいたろか