デザイン
 
アート
 
ロボット
 
バイオ
 
水都
 
食
 
トピックス
大阪の夏まつりの楽しみ方
ミナミに色づく『お茶屋』文化
ストリートダンスの聖地・大阪
#4「“あみだ池”からたどる堀江の歴史」
#3「大阪のゲストハウス事情・最前線」
#2「大阪の「ええもん」ってなんだろう?」
#1「マクロな視点で地球環境の保全を
 
メディア
 
大阪万華鏡
水都

 1990年に大阪で開催され、予想を大幅に上回る入場者を得た「国際花と緑の博覧会」(以下、花の万博)をご記憶の方は多いだろう。その会場は現在、花博記念公園鶴見緑地となっているが、もう一つ、その理念を継承して行われている「コスモス国際賞」はご存知だろうか。花の万博の基本理念である「自然と人間との共生」に寄与する研究活動・業績に対する国際的な顕彰事業で、花の万博の余剰金を原資に1993年から続けられている。第1回受賞者のギリアン・プランス博士(英国王立キューガーデン園長・当時)以来、フランス、アメリカ、中国、日本、カナダ、エクアドル、メキシコ、インドなど世界各国の研究者・研究機関に対して贈られている。
 15回目となる2007年の受賞者は、ロンドン大学教授のジョージナ・メイス博士。主な受賞理由は、絶滅危惧種を特定する科学的基準の立案、「レッドリスト」の作成指導など環境保全のための全地球的な取り組みや、生態学や遺伝学から政策まで視野に入れた包括的な取り組みが評価されたものである。


2007年の受賞者
ロンドン大学教授ジョージナ・メイス博士
 人間が自然を尊び調和しながら生きる「自然と人間との共生」というテーマを掲げた花の万博は、地球上のすべての生命と、その生命活動を支える地球を一体のものとして捉え、<地球丸>の共生をアピールした。こうした共生の実現には、統合的、包括的な手法によるアプローチが必要とされる。そこで、この分野における優れた研究業績を発掘・評価し、顕彰することで新しい価値観を促すとともに、その成果を人類共通の資産にしようというのが「コスモス国際賞」の趣旨である。対象となるのは、「花と緑に象徴される地球上のすべての生命体の相互関係およびこれらの生命体と地球との相互依存、相互作用に関し、地球的視点からその変化と多様性の中にある関係性、統合性の本質を解明しようとする研究活動や業績であって、「自然 と人間との共生」という理念の形成発展にとくに寄与すると認められるもの」(コスモス国際賞ホームページより)である。
ノーベル賞に代表される科学分野の賞の多くが、分析的、還元的な視点からの評価が主であるのに対して、コスモス国際賞は全地球的な視野に立った包括的、統合的手法や継続的な取り組みを重視している。いわばミクロな視点で捉えられてきた20世紀型の科学に対して、関連領域との連携も含めたマクロな視点から、21世紀に必要とされる新しい科学の潮流を生み出そう試みでもある。

 本年の受賞者ジョージナ・メイス博士(ロンドン大学教授)は、絶滅危惧種を特定する科学的基準の立案、「レッドリスト」の作成など、生物多様性の保全に対する継続的で総合的なアプローチによる研究成果が評価された。今日、多くの種の絶滅が危惧されている。レッドリストは1960年代から作成されていたが、当初、絶滅危惧種を特定する科学的な基準は整備されていなかった。そこに生態学や遺伝学、数学などに基づく科学的アプローチを導入したのがメイス博士で、IUCN(国際自然保護連合)で「絶滅危惧種を特定する基準」を立案し、「レッドリスト」の作成を指導するなど、この分野で主導的かつ先駆的な貢献を行った。これは種が置かれた状況を最も総合的に捉えたものであり、様々な国で採用可能な単一のシステムである。さらに、ワシントン条約の運用規則の主要な立案を行うなど、その活動は実践や政策領域にまで及んでいる。こうした一連の活動は、世界的にも生物多様性に関する国際的関心を高め、地球規模的な環境保全活動に対する意識を高める役割も果たした。こうした包括的な取り組みが、コスモス国際賞の趣旨にふさわしいとの評価を得た。
 
 大阪といえば、とかく緑の少ない街というイメージがついてまわる。花の万博開催の時も、その成功を疑問視する向きが少なくなかったと記憶する。いわく、(実利優先の?)大阪で花と緑をテーマにした博覧会に人々が足を運ぶだろうか、と。結果は、2,300万人余の入場者を集める盛況ぶりであった。この時の余剰金69億円に大阪府、大阪市それぞれ16億円ずつの出捐金を加えて基金が創設された。「コスモス国際賞」はその運用益によって運営されており、受賞者(個人もしくは団体)には賞金4,000万円が贈られる。日本にはこの他、科学技術分野の国際賞として、日本国際賞(国際科学技術財団)、京都賞(稲盛財団)、ブループラネット賞(旭硝子財団)などがあるが、これらの中でもコスモス国際賞は、統合的な手法が必要とされる今日的課題にアプローチする、新しい科学のあり方を促進するという方向性をとくに重視しているという。花と緑に縁遠いと思われていた大阪での花の万博の成功、さらに、その理念を継承する形で、地味ながらも息の長い顕彰活動が続けられてきたことは、とかく実利に結びつかないことには淡白と思われがちな大阪の、別の一面をアピールすることになるだろう。
メイス博士の授賞式は、2007年10月4日に大阪のいずみホール(大阪市中央区城見)で行われる。また、今年は同賞15回記念として、京都や奈良、東京で過去の受賞者による講演会やシンポジウムも予定されている。
2007年7月26日
(大阪ブランド情報局 小村みち)

【参考】
 財団法人国際花と緑の博覧会記念協会 http://www.expo90.jp/index.html
 コスモス国際賞 http://www.expo-cosmos.or.jp/
 (2007年受賞者紹介 http://www.expo-cosmos.or.jp/jusyou/2007.html