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Kansai Flea Market

またたく間に祝900号Kansai Flea Market

このシリーズでは、おもに関西地区に在住・在勤する外国人を対象とした英語情報誌について、順にご紹介していく。ここで言う情報誌とは、オンラインか印刷物か、無料か有料か、広告の量が多いか少ないかを問わない。外国人が関西での暮らしを最大限楽しむためのものであることが条件だ。


「カンサイ・フリー・マーケット Kansai Flea Market(以下KFM)」は毎週発行のクラシファイド(各種広告や告知などを集めた情報誌)で、その発行回数は900回に届こうとしている。シンプルなコンセプトに沿って作られた地味な情報誌だが、その体裁もずっと簡素だ。A4の紙7枚を綴じずに折って、コンパクトなA5サイズにしたもので、ポケットやバックパックにしまいやすい。空港の到着ロビー、大型書店の洋書コーナー、インターネットカフェ、語学学校、外国人の若い世代に人気の飲み屋など、在日外国人や海外からの旅行者がよく行きそうな場所にはたいがい置いてある。KFMの読者層の中心は、少しのあいだ英語を教えながら日本での暮らしを満喫しようと来日した欧米人たちだ。

KFMのデザインは見た目は昔と変わらず、ごく初期のマッキントッシュのワープロで作成された、今でいうならZEN(禅)ふうのモノクロの美学を貫いている。図柄は最小限に抑え、基本のフォントのみを使い、写真は1枚もない。ただひとつ表紙で目立っているのが、陽気なノミのキャラクターで、テレビや自転車やドルのマークを大道芸のように放り投げている。ちなみにこのドルマークは「毎月の家賃」や「給料」を意味するらしい。旅行会社、保険会社、各種学校、飲み屋など、いくつかのスポンサーの独自の広告がページの全体や一部を占めるが、それを除けばあとは、文字だけの、一行たった100円の個人広告がずらりと並ぶ。貸室、さまざまなレッスン、化粧品、オーガニック食品、パーティなどの宣伝のほか、恋人募集の広告もちらほらと見かける。読ませるための記事はひとつもなく、長期滞在者や永住者が興味を持ちそうなサービス(年金、投資、不動産、医療サービスなど)の広告もほとんどない。

KFMは1991年4月、地元大阪の会社員だった平山博一氏によって創刊された。彼はいまも、日本人スタッフ2人と外国人スタッフ1人の手を借りながら、発行にたずさわり続けている。平山氏は80年代後半、外国人に部屋を貸そうという家主があまりいないため、新しく来日した外国人たちがアパート探しに苦労していることを知った。住む場所が見つかると、近所に捨てられているものを拾ってきて家財道具を調達するのだとも聞いた。KFMはそのような、予算に限りがあったり、身の回り品だけで来日した外国人たちにとって、日本での生活の準備を整えたり、滞在を終え帰国する前に「さよならセール」を開いたりするための、いつでも頼れる情報源として誕生したのだ。

以前はたしかに、テレビや自転車をはじめとする中古品の広告が多かったKFMだが、それも世間の流れとともに、この10年ほどでずいぶんと様変わりしたようだ。電話の加入権やハイファイ機器の広告は、いまではすっかり影をひそめている。現在は誌面のおそらく7割以上が、住居と求人の広告で占められている。インターネット(ネットオークションやショッピング、ソーシャルネットワーキングサービスなど)の発達のほか、バブル後の物価の低下や、関西の外国人コミュニティーの中でビジネスチャンスが広がっていることなどがその理由だ。「最近は外国人の起業家がつぎつぎと小規模のビジネスを立ち上げていて、人手を増やすためにKFMを利用しているようですね」とヒラカワ氏は説明する。そのため、従来の「パート教師」「モデル」「バーテンダー」に加え、「エキストラ出演者」「コンピューター技師」「ウェブデザイナー」「リポーター」などの募集広告が増えているそうである。

KFMの配布方法も時代とともに変化した。新しく開設したウェブサイト(www.kfm.to)のほか、コミュニケーションにケータイが欠かせない若い読者のために、携帯用サイトもある。売り主、買い主からのKFMへの問い合わせは、Eメール(editor@kfm.to )のほか、電話(06-6444-5535)やファックス(06-6444-5534)でも受け付けている。


筆者プロフィール
ティム・レモン
カンファレンス・イベント・マルチメディアを専門とするプロデューサー/プランナー。 関西に暮らして20年以上になる。