大阪ブランド情報局 | Osaka Brand Committee

いいですね、今の人工衛星の話。青木さんのあの語り口でお話しされるから共感がもてます。一般的に言うと、これがもし大学の先生が話されると、恐らく難しくわかりにくい話になります。難しい話をおもしろく、しかも分かりやすく話せるというのが、大阪人の特長です。青木さんのような方の話をうかがうと、大阪ブランドというものがとてもよくなっていくための、あるいは大阪ブランドをつくる、ひとつの道なのかなと思うんですね。先ほどの梶本先生の話でも、大阪ブランドというのはバイオではすでに世界のトップクラスだと思いました。このように、ものづくりでトップランナーになり、大阪のブランドイメージを上げていくというのも非常に大切なアプローチだと思います。しかし、やはりこれは相当時間がかかりますね。そこで、大阪のブランドイメージをなぜ上げる必要があるのかともう一度考えてみたいと思うんです。 大阪というのは、これから国際観光都市として生きていかねばならない。観光の楽しみというのは、「見る、買う、食べる」じゃないかと思うんです。買っていただくために、大阪ブランドがいったいどういったふうに機能するのかを考えます。20年ほど昔、浅草はいわゆる袋物屋さんの本場でした。そこのある社長が考えて、高い家賃を覚悟して青山通りに本社を移転しました。袋物屋がバッグ屋に変わったわけなんですね。ハンドバッグです。するとたちまち売上が非常に増えたと言うんです。それは「青山通り」というブランドイメージの効果です。大阪もそういうふうにしなければいけない。大阪に本社のある会社の商品っていうのは、しゃれていて実質的に使い良いというイメージができてくると、大阪で買う楽しみ、売る楽しみというのが増えてくる。そういった意味で、大阪のブランドイメージを良くすることは、ショッピングにつながっていくわけです。 また、食べるという面では、幸い大阪っていうのは、良い食材が安く手に入るという定評がございますね。今、私は東京に常駐して日本芸術文化振興会というところの理事長をしています。そこでは、月に3回ぐらい役員会食というのがあるんですが、そこで出る1500円の幕の内弁当と比べると、大阪の方がずっとおいしいんですね。大阪でいう1500円の幕の内を食べようと思ったら、東京では2500円くらい出さないと実質的には出てこない。これは私が大阪びいきで言うんじゃなしに、そこに来ている人たちがみな認めるんです。食べるという面では、大阪ブランドのイメージというのは今でもかなりある。 問題はですね、見るというところです。大阪のブランドイメージというのは非常に問題がある。まず安全でないと、誰も見るゆとりもありません。だから、まず最初に治安を回復しないといけない。また、きれいなまちというのは大層な工事をしなくても、市民がマンションや家の窓に一本ずつ花をかけていくと、まちがきれいになるわけです。あるいは道の通りに置いてある自転車の置きっぱなしを止めるとか、車の置いていけない道路には車は置かないとかですね。商店街でも、道路まで自分の店の一部のように張り出していくというようなことをやめれば、まちはずいぶんきれいになっていくと思うんですけども。 そういう意味で、これからは市民がみんな参加して、見るに値するまちに変えていく必要があると思うんです。だから、今回のこの大阪ブランドのイメージアップというのは、官から、すなわち上からの命令というような形でなしに、下から自主的に「まちをきれいにしようやないか」という動きが大切です。自分の周りだけでもきれいにしようやないかということから始めていきたいと思うんです。 もうひとつ、日本芸術文化振興会の理事長は、国立劇場とか、新国立劇場とか、大阪の文楽劇場とか、そういったもの全ての小屋主という立場にあります。先ほど河内さんからとてもいいことを言ってもらったんですが、大阪というのは、世界文化遺産の指定を受けた文楽の発祥の地ですね。竹本座というのが道頓堀にできて、それから文楽というのが始まって。世界文化遺産の生まれた町なんですよね。歌舞伎も同じことです。ところが残念ながら、現在では大阪ではお客様が少ない。東京に比べて文楽とか、歌舞伎を興行するのが難しい。「大阪で生まれ、大阪で育てたものだからこれからも育ててやろう」と思った各人が、財布の中からお金を出して足を運んでもらわないと、歌舞伎や文楽が育たないわけですよ。事業は、青木さんがおっしゃったように利益が出なければ続かない。社会奉仕では続かない。 今、文化庁長官の河合隼雄さんという人は京都大学の名誉教授で、京都出身の方です。私がたまたま大阪出身なので、関西元気文化圏ということを提唱され、秋になると芸術の秋と称して、11月7日からずっといろんな文化行事をする。ところが、9月4日から東京でも始まったので私も見に行った。音楽会、音楽会みな満員で、立派に興行として成り立っているんです。ところが関西ではそうはいかない。文化庁とか文部科学省の反対を押して、関西でいろんなイベントやるんですが、お客様の入りの悪いこと。下手すると出演者の方が多くなるくらいで、せっかく関西元気文化圏という大きな実験やっているのに、先の見込みが立たない。おそらく今の状態だと、河合さんがやめられたら関西でそういうものはできないと思うんですね。だから、「見る」ものを育てるには、街の中をきれいにするのと同時に、文楽とか、歌舞伎とか、いろんな演劇、ミュージカルを育てなければならない。「いっちょやったろか」っていう若い人が始めた演劇グループを育てるために、ほんとに2千円か3千円の入場券を買ってあげないといけない。その中には将来劇団四季みたいになるものがあるかもしれない。劇団四季自体、そういう風にして大きくなったんですよ。もともと浅利慶太さんは給料を払うにも困るほど苦労したけども、辛抱して辛抱して、今では日本の劇団四季になっている。大阪でもお客さんが「同じように育ててやろう」と思って来てくれることになると、若い演劇志向や音楽志向の人がみな大阪に集まってきますから若人のまちになる。ところが、残念ながら、今のところはまったく逆になっている。もちろん演ずるほうにも問題がある。例えば文楽なんか「字幕を入れよう」「今の若い人でも分かるようにしようよ」と言うのですが、なかなかできない。今後は精一杯分かりやすくしますが、見るものを育てるということを、市民参加の形でやっていただけるといいまちになるんじゃないでしょうか。 この前、安藤忠雄さんと一緒にNHKの対談に出たんですけど、安藤さんがときどき「大阪あかんで、もうあかんで」と言われるんです。「安藤さん、ここでは言わんといてよ」とお願いしたことがあるんですが、安藤さんの気持ちは昔からずっと大阪を良くしよう、良くしよう、良くしようということです。安藤さんの気持ちがかわいさ余って憎さ百倍になっては困りますので、何とか安藤さんを引止めとかないといけないと思ってるんです。

昨日、実は、東京の財界で経済審議会に入っている大物と文部科学省の人とで食事をしました。その席で「津田さん、大阪のブランドイメージ良くしようと思ったら、キーパーソンは安藤忠雄さんと塩爺やで」と言われました。この二人のイメージが、東京から見たいい方の大阪のイメージなんです。塩爺はね、いい背広着て、年の割にスマートですよ。あの語り口で、ズバズバものを言って、あれはやっぱり大阪のイメージなんですな。安藤さんも高い服やと思うけど、あまり着映えしない。物言いもそんなスマートにおっしゃらないけど、東京大学の名誉教授として授業したり、マサチューセッツ工科大学に行って記念講演をしたりしておられる。これが大阪ですよ。安藤さんが自分でおっしゃったように、学歴がなくっても、あの難しい建築学を極めて世界中で引っ張りだこになる。そういう風な人材を育てて「がんばろうよ、がんばろうよ」というのが大阪の過去の財界人だったんですね。安藤さんのように、世界的に認められながら実質本位に徹する。これが大阪のイメージなんです。だから、塩爺や安藤さんのように、大阪のブランドイメージを良くするために、ぜひとも市民全員参加でがんばりましょう。

どうもありがとうございました。

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