去る11月、大阪大学で世界初のロボット演劇「働く私」が上演されました。出演したのは生身の役者2人と、三菱重工が開発したコミュニケーションロボットwakamaru。20分の短編劇です。 舞台はお茶の間。若い夫婦、祐治と郁恵は2体のロボット、タケオとモモコと同居しています。せっせと料理を作るモモコは、この家でなくてはならない存在になっていますが、タケオは「働きたくない」と悩みます。話が進むにつれ、祐治も働くことができない存在だということが分かってきます。
日常生活の中にロボットがいる風景の中では、人とロボットとのコミュニケーションだけでなく、人と人、そしてロボットとロボットとのコミュニケーションが浮かび上がってくる、ということを、この短編劇は仄めかしています。
この作品の脚本・演出を手掛けたのは、劇作家・演出家の平田オリザ氏。彼の作品では、日常の一場面を切り取ったような会話が舞台上で繰り広げられ、その淡々とした展開の中から、あるテーマが浮かび上がってきます。この作品では、働くために作られたロボットが、人格を持ったがゆえに「働きたくない」という、人間と同じ悩みを引き受けることになる、という虚構のアイロニーを描いています。
平田氏の手にかかると、感情を持たないはずのロボットが悩んでいるように見え、発する言葉に深みを感じさせます。ここには「発話と動きをずらす」という演劇のテクニックが働いています。「あと0.3秒間をあけて」「35センチ右に」といった、役者の立ち位置、動き、表情、間などを細かく決めていく演出によってリアリティが生み出され、生身の人間だけでなく、感情を持たないロボットをも役者に変えるのです。それは人形をあたかも生きているかのように操る浄瑠璃の人形遣いの技にも通じています。
ロボット側のテクニカルアドバイザーを務めたのは、大阪大学大学院工学研究科の石黒浩氏。人間そっくりの外観と動作をもったアンドロイドの開発者であり、人間とコミュニケーションするヒューマノイドロボットの研究者でもあります。
石黒氏は今回のプロジェクトのねらいを「ロボットに対する違和感をなくすこと」に置いています。ロボットの性能をいくら高めても、それが人間にとって違和感のある存在である限りは、両者の心地良い関係は築けません。しぐさや間の取り方、相槌のうち方など、人間にとっての自然な振る舞いをロボットに取り入れることで、ロボットと人間との関わり方を具体的にイメージしてもらうことを目的にしているのです。

そしてロボット側の監督・プロデューサーは、コンピューターソフトウェア開発会社・(株)イーガー取締役会長の黒木一成氏。黒木氏が今回のプロジェクトを立案し、平田氏・石黒氏に協力を呼びかけ、同社で約2年かけてプログラムを構築したことで、今回のロボット演劇は実現しています。
黒木氏は「ロボットをもっと一般に普及していきたい。またロボット演劇を大阪発の観光コンテンツにしていきたい。来年には商業化し、5年後には海外での公演を実現させたい。」と語ります。
次世代産業として技術開発が注目を集める一方で、ロボット産業のマーケットはまだまだ成長途上にあります。危険場所での作業、過酷な作業、超精密作業などを人間に代わって行う産業用ロボットはすでに大きな市場を形成していますが、エンタテインメント(二足歩行・動物型ロボットなど)、生活空間(コミュニケーションロボット・ユビキタス)、医療福祉、教育といった分野では、まだまだ実際の需要は追いついていないのが現状です。
今回の“ロボット演劇”に寄せられる期待。それは、演劇の可能性を広げること、ロボットに対する一般の人々の敷居を下げること、そしてロボットを商品として販売する以外のビジネスの可能性を示すこと、このあたりにあるようです。
“夕焼けって、好きな人と見るのがいいんじゃない?”(モモコ)
“でも僕たちはまだ、そこまで進化していない。”(タケオ)
| 来る2月9日(月)10日(火)に大阪で開催される「世界ものづくりサミット・グローバルアライアンスフォーラム」において、ロボット演劇「働く私」が上演されます |
| 上演日時: | 平成21年2月10日(火) 18:00-18:30 |
| 場所: | 堂島リバーフォーラム |
| 主催: | 世界ものづくりサミット実行委員会 大阪市、大阪大学、(社)関西経済連合会、(社)生産技術振興協会 |
| 協力: | |
| お問い合わせ: | 世界ものづくりサミット実行委員会事務局 (社)生産技術振興協会
TEL.06-6944-0604 FAX.06-6944-0605 |
| 参加お申込みはこちらになります→http://www.global-osakaforum.org/ |
平成21年1月27日
文:大阪ブランドグループ 山納 洋
