大阪万華鏡 アート 大阪ブランド情報局 | Osaka Brand Center

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 大阪・鶴橋で生まれ育った生粋の浪速っ子・森村泰昌は、現代の日本を代表する美術家である。彼の作品は絵画や彫刻といったジャンルでは括ることのできないユニークなものだが、そういうユニークな作品を作る人が国際的に認められること自体が、美術の不思議さ、奥深さを物語っているとも言えよう。

 森村の名を世間に知らしめたのは、1985年に発表されたゴッホの自画像に自らが扮した作品。ゴッホの作品を丹念に調べ、服装、背景、表情などを独自の方法で再現した上で写真撮影して、新たなオリジナル作品として提示するのだ。「そんなの人真似じゃないか」。そう思われる人もいるかもしれない。確かに真似である。しかし、オリジナルをとことん調べ上げ真似をしても、そこには必ずギャップが生じるものだ。また、美術家の視点で名作を探るうち、研究者でさえ気づかない新たな発見をすることもある。オリジナルとの間に生まれたギャップの中に森村自身の思いや現代の価値観、新たな視点などを詰め込むことで、作品は一個の独立した表現として輝きを放つのである。その後彼は美術史上に残る様々な名作に扮した作品を次々と発表、国内はもとより海外の名立たる展覧会にも多数参加し、現代の日本を代表するアーティストとして認められた。また、銀幕の名女優に扮したシリーズ作品や、三宅一生とコラボしたアート×ファッションの仕事、映画・演劇への出演、書籍の発行など、その活動範囲が驚くほど多岐にわたるのも彼の特徴である。

《肖像(ファン・ゴッホ)》 1985年、カラー写真、

国立国際美術館蔵

《第3のモナ・リザ》 1998年、カラー写真プリント、

カンヴァス加工、作家蔵

《私の中のフリーダ (手の形をした耳飾り)》

2001年、カラー写真、作家蔵

《表情研究III》 1994年、白黒写真、

原美術館蔵

《フェルメール研究(3人の位置)》
2005年、カラー写真、国立国際美術館蔵
《なにものかへのレクイエム(烈火の季節)》
2006年、ビデオインスタレーション
※画像はいずれも横浜美術館での『森村泰昌「美の教室、静聴せよ」展』に出品されています。

 そんな森村だが、新作では新たな領域へ自らを導こうとしている。現在ヴェニスで開催中の個展(『ヴェネチア・ビエンナーレ』の関連事業)、そして横浜美術館での個展に出品されている映像作品『なにものかへのレクイエム』がその正体である。本作で森村は、三島由紀夫、レーニン、ヒトラー(とチャップリンの『独裁者』のダブルイメージ)に扮し、彼らの歴史的場面を借りて自らのメッセージを言葉で伝えている。例えば三島由紀夫なら、1970年、自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げる直前に行った有名な演説を再現しつつ、現在のアート状況や若いアーティストに向けて痛烈な主張を浴びせる、といった具合。20世紀という時代を森村なりに総括すると同時に、混迷の21世紀に向けて何らかの指針を設けようというスケールの大きな試みである。これまでに比べ格段にメッセージ性が濃い作品なので賛否両論が噴出するかもしれないが、十分なキャリアを持つ美術家がリスクを恐れず新たな一歩を踏み出す勇気は大いに評価されるべきである。今後森村泰昌がどんなビジョンを我々に投げかけてくれるのか、期待はますます膨らむ一方なのだ。

  最後に筆者の思いを。森村は地元大阪を深く愛する人である。なのに近年、地元で彼の展覧会がさっぱり行われない。大阪の美術館関係者には是非彼の展覧会を企画するよう熱望する次第である。

2007年9月11日

森村泰昌「美の教室、静聴せよ」展 開催中〜9月17日(月・祝)まで 10:00〜18:00(金は〜20:00) 木曜休 ※入館は閉館の30分前まで 一般1,100円 大・高700円 中400円 小学生以下無料 横浜美術館 横浜市西区みなとみらい3-4-1 TEL 045-221-0300

URL http://www.yaf.or.jp/yma/

筆者プロフィール 小吹隆文 情報誌編集者を経て、2005年よりフリーの美術ライターになる。 主な執筆先は、京都新聞、美術手帖、ぴあ関西版、エルマガジン、artscape(ウェブ)など。 個人サイト「勝手にRECOMMEND」

URL http://www.recommend.ecnet.jp/

ブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」

URL http://www.keyis.jp/

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