大阪万華鏡 デザイン 大阪ブランド情報局 | Osaka Brand Center

 
 
 
 
 
 
 
 

 デザインとは何だろう。モノを美しくすること、使いよくすること―いずれにしても、その営みは何かを「つくる」ことと結び付けられている。衣服、工業製品、印刷物、建築物…ジャンルはさまざまだが、通常、何かを新たにつくり出すことにデザイナーは深く関っている。
 しかし、今ないものをつくるよりもむしろ、既につくられたものの十分に活用されていないものを「使いこなす」ことこそ、これからの時代にはより必要とされるのではないか?そんな思いをもって、公園などの公共空間をフィールドに、先駆的な活動を展開している人がいる。大阪市北区に事務所を構えるランドスケープ・アーキテクト山崎亮さんだ。

山崎さんの活動のフィールドは幅広く、大阪に限定されない。現在稼動中のプロジェクトを見ても、穂積製材所プロジェクト(通称ホヅプロ/三重県伊賀市)、「探られる島」プロジェクト(兵庫県姫路市家島地域)など広範なエリアに及んでいる。しかし、さまざまな地域での実践を経た上で、「大阪の人は総じて公共空間の使い方が上手い」という。
 たとえば、道路の植栽帯でネギやシソを育てる人。家屋のすぐ横を走る線路の構内に植え込まれた植物。シャッターが下りた閉店後の店先で始まる井戸端会議。山崎さん曰く、「例えば東京の人の場合、“みんな”と“私”を区別していると感じる。けれど、大阪の人は、“みんな”の中に“私”が含まれていると思う。」いわば「みんなのものは私のもの」という、いい意味での図々しさ、公共空間を「使いたおす」センスが卓抜なのだという。それが、意表をつく公共空間の使いこなし方を生んでいるのではないか、と。
  農学部で造園を学んだ山崎さんは、もともとハードとしての公園設計が専門で、その使い方、使われ方にはさほど関心がなかったという。それが、兵庫県立有馬富士公園の運営サポートを手がけたことをきっかけに、そこで繰り広げられるアクティビティなどソフト面も含めた活動へと広がっていった。

 山崎さんが公共空間の「使い方」にこだわる背景には、人口減少時代における都市の縮小化にどう対応するか、という問題意識がある。人口減は税収減に直結するから、これまで公金で管理運営されてきた公共施設のメンテナンスが難しくなる。メンテナンスが行き届かないスペースの増加は、まちの荒廃につながる。この課題に対応するには、住み手自身によるエリア・マネジメントが欠かせないと考えているからだ。  実は大阪は、人口減少の先進地だという。大都市の中でも人口減少のペースが速いのだそうだ。大阪郊外には多くの住宅地があるが、入居者が決まらないままの戸建住宅などが増えてきており、今はそれほど目立たないものの、やがてこの傾向がまちそのものの存続に波及するであろうことは想像に難くない。山崎さん自身が郊外の住宅地で育ったこともあり、「これから郊外がどうなっていくのか、その行方が非常に気になる。」実際そうした地域のフィールドワークもすでに始めているという。

  いったん開発され人口が膨らんだ都市をいかに「小さくつくりなおす」か、今後の切実な課題になると山崎さんは考えている。そのとき、地域にどれだけ主体的な住み手がいるか。それがまちの魅力と活力を左右する。山崎さんが、「つくる」以上に「使う」ことにこだわる理由は、そこにある。誰かにお任せにするのでなく、主体的に公共スペースの運営を担い、地域に活力を生み出すロールモデルを提示すること。山崎さんの仕事は、地域そのものをデザインすることにほかならない。

2007年12月7日
(大阪ブランド情報局 小村みち)

山崎 亮(やまざきりょう)
株式会社studio-L代表取締役。ランドスケープデザイナーとして公共空間のデザインに携わる。また、完成した公共空間を使いこなすためのプログラムデザインやプロジェクトマネジメントにも携わる。並行して「人口減少時代のランドスケープデザイン」について東京大学大学院で研究中。京都造形芸術大学/近畿大学/大阪工業技術専門学校講師。(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構主任研究員。共著書に、『マゾヒスティックランドスケープ(学芸出版社)』『都市環境デザインの仕事(学芸出版社)』『地域創造へのアプローチ(IBCコーポレーション)』などがある。
 
■ 参考URL
studio-L http://www.studio-l.org/

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