ディスカッション
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堀井良殷さん: それでは最後に、これから大阪が元気になるために、特に文化をどう発信していったらいいのかを、ひと言ずつお願いします。
難波利三さん: さきほど言いました大阪弁の魅力を精一杯に見せる場として、大阪人が大阪弁を誇りに思って全国に向けてしゃべれるような、そんなよりどころとして言葉のミュージアムみたいなものを作ってもらえないかなと思います。それはいわば大阪弁のショップのようなもので、決して学術的な難しいものではなくて、府民レベル、市民レベルで楽しめるような仕掛けがいいと思います。

偉大なる方言としての大阪弁を中心として、全国津々浦々の方言を集めたり、おいおいは世界中の言葉を全部大阪のその一堂に集めたりして、あそこへ行けば世界の言葉が全部楽しめるよという場が欲しいと思います。それが大きな発信の基地になるような気がしております。
桂米朝さん: 本当にそういう場所があったらなあと思いますね。住まいミュージアムは人が集まるようにはちょっとできていませんし。ワッハ上方もふらっと入るというわけにはいかない。便利な所で集まる所がないものかなと思います。何も一か所に集めなくても、何カ所かそういう場所があったらいいなと思います。
脇田修さん: 実はさきほど、鴈治郎さんが言われたロンドンの大英博物館で展示していた上方浮世絵ですが、今度はうち(大阪歴史博物館)で展示するのです。そういう勧進元は、ロンドン大学のガーストルさんという先生がやってくれましたが、結構、大阪の外の方が、大阪のいろいろなものに関心を持っておられるのです。

私は、大阪の方がもっと大阪文化に誇りを持って関心を持ってほしいと思います。以前、大阪歴史博物館で木村兼葭堂(注:江戸時代の大阪町人で博物学者・蔵書家)の展示をやった時には、実は悲惨な結果でした。学芸員が頑張っていい展示をやったのですが、兼葭堂の名前を知らない方がほとんどでした。博物館としてももっと頑張らないといけないと思っております。
堀井良殷さん: さきほどコシノさんがおっしゃいましたけれど、アジアではずいぶん日本の文化に対する関心が高まっていて、特に大阪発の文化にアジアの各国で関心がものすごく高いそうです。この間あるデザイナーの方とお話ししましたら、あの高度成長した日本、その中でも、人間らしく親しみやすい大阪の精神や文化を知りたいという憧れが、若い人たちの間で多いのだということを聞きました。大阪の文化をうまくアジアに発信をしていければと思います。
コシノヒロコさん: これからはアジアの時代ですし、その中でも特に私はアジアイコール大阪という形を作っていきたいのです。やはりアジアの人たちは、民族の中に東洋の血という共通のものをしっかり持っています。ですから、アジアの人たちにとって大阪の文化はとても理解しやすく、親近性が深いのではないかと思います。

さきほども言葉の話が出ましたが、先日、経済産業省の方々の中で講演をさせていただきました。そこで気づいたのは、本当に自分の本音を言いたい時には自然に大阪弁が出るのです。実は、私は東京へ行った時は東京弁で話しているのですが、ここは伝えたいという時には必ず大阪弁が自然に出てくるのです。大阪弁というのは、それほど伝えやすい言葉なのです。相手も大阪弁の柔らかさがふっと入ってくると、ものすごく感じやすいのです。これは非常にすごい力だなと思いました。
堀井良殷さん: 皆さんどうもありがとうございました。
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